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エルダー女性と彼女の世話人

障がいがある方の親亡き後を考える

 私は、身近に障がいをお持ちの方がいることもあり、このテーマについては、特に思い入れがあります。司法書士の資格を取得しようと思った大きなきっかけは、成年後見業務に携わりたいと思ったからです。3年半猛勉強をして資格を取得し、修行をしていた以前の事務所では、補助者として10名の方の後見業務に関わってきました。司法書士として登録した今、リーガルサポートかながわに入会し、今後積極的に取り組んでいきたい分野だと考えています。

​ さて、このテーマについて、成人したお子さんの将来について不安を感じている親御さんは多いのではないでしょうか。成年後見(法定後見・任意後見)、遺言、信託、保険等どういう選択肢をとるのが最善なのかは、それぞれご家庭の状況によると思いますが、その中でもこのコラムでは、今関心が集まっている「家族信託」について記したいと思います。

 下記の仮事例で考えてみましょう。長女Dさん(58歳)からのご相談です。

「父Aは既に他界しており、母Bには、B名義の不動産(自宅・賃貸アパート)と預貯金があります。母Bは、長男C(62歳、障がいあり)と同居し、長男Cの面倒を看ていますが、母Bも84歳で、最近物忘れが気になるようになってきました。母B長男Cの今後の生活のことが心配です。母Bは、長女D長男Cに平等に相続させたいと考えているようですが、どうしたらよいでしょうか。」

 この事例で特に対策をとらなかった場合で、母Bさんが認知症を発症し、判断能力が失われた状態となってしまうと、今後不動産の管理や処分、預貯金の引き出し等ができなくなり、母Bさん長男Cさんの生活に支障が出る可能性が考えられます。母Bさんがこれらの行為を行う場合、成年後見の法定後見制度を利用する選択肢しかありません。

​ そこで、長女Dさん母Bさんの自宅・賃貸アパート・預貯金を管理できるよう家族信託を利用するとします。ここでは、

母Bの自宅・アパート・金銭を信託する契約 母Bの金銭を信託する契約の二つに分けて設計します。

① 母Bの自宅・アパート・金銭を信託する契約

委託者:母B

受託者:長女D

受益者:母B

第二受益者:長男C長女D

信託財産:自宅・アパート・金銭(アパート経営に必要な敷金や管理費用)

信託終了事由:母B長男Cの死亡

帰属権利者:長女D

                              

                             

                           

          
        
         
          

                      

 

                                                  

 

 

 

・自宅とアパートを信託財産にして、その管理や修繕、

 処分、日常生活費の送金、母Bが施設に入所した場合の
 
施設費支払い等を長女Dに任せる。

・母Bが死亡した場合、次に長男Cと長女Dが受益者となり、

 長男Cが死亡した場合、信託契約は終了し、

 最終的に長女Dが残余財産を取得する。

② 母Bの金銭を信託する契約

委託者:母B

受託者:長女D

受益者:母B

第二受益者:長男C

信託財産:金銭(母B長男Cの生活資金)

信託終了事由:母B長男Cの死亡

帰属権利者:長女D

 

 

Bと長男Cの生活費として、金銭を信託財産とし、長女Dに
​ その管理を任せる。

・母Bが死亡した場合、次に長男Cが受益者となり、長男Cが死亡した
 場合、
信託契約は終了し、最終的に長女Dが残余財産を取得する。

 

 このように受益者連続型信託をすることで、二次・三次相続にも対応ができます。ご家族の関係や資産状況、財産管理、相続税対策などを考慮しながら、その方にとっての最善策が何かを決めていけると良いですね。

​ 

   信託財産

   ・自宅

   ・賃貸経営アパート

   ・金銭(敷金や管理費用)

委託者 母B

受託者 長女D

※母Bと長男Cが死亡した場合に終了する

受益者 母B

​②利益を受ける権利

​① 信託契約

↓↑

↓ ③ 母Bの死亡

↓ ④ 長男Cの死亡

​委託者 母B

受託者 長女D

① 信託契約

​↓ ↑

※​母Bと長男Cの死亡によって終了する

信託財産

​金銭(生活資金)

​受益者 母B

② 利益を受ける権利

第二受益者 長男C

帰属権利者 ​長女D

​↓ ③ 母Bの死亡

​↓ ④長男Cの死亡

第二受益者
​長男C 長女D

​帰属権利者 長女D

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